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フリーランス通訳者の道へ

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プロフィール

松林 由香さん

幼少期をドバイと南アフリカで過ごした帰国子女。イギリスの大学院を卒業後、一般企業勤務を経て通訳者の道へ。大手携帯事業会社や製薬会社など、10年以上のインハウス通訳経験を持つ。特にヘルスケア領域(医薬品、医療機器等)で高い専門性を発揮。2023年4月よりフリーランス通訳者として独立し、第一線で活躍中。


本日は通訳者の松林由香さんに2度目のインタビューを受けていただきました。松林さんはいくつかの会社でインハウス通訳を経験された後、2023年4月よりフリーランス通訳に転身されました。

すでに独立直後からスケジュールはほぼ埋まっているという順調な滑り出し。フリーランスを目指す読者の方々へ、その秘訣とキャリアの歩みを伺います。

「顔面蒼白」の通訳デビュー

工藤:お久しぶりです。松林さんとの最初の出会いは、まだ大学生の時でしたね。

松林:そうです。大学の先生の紹介で、エンターテイメント現場の通訳面接に行き、当時コーディネーターだった工藤さんと出会いました。もう25年以上前のことですね。

工藤:第一印象は「とても明るい子だな」と、昨日のことのように覚えています。最初の現場はいかがでしたか?

松林:工藤さんから膨大な資料が送られてきて、その多さに圧倒されました。当日、一人でバスに乗って向かったのですが、不安でいっぱいでした。担当したのはロックアーティストの方で、岩の種類を職人に伝える通訳だったのですが、固有名詞が分からず顔面蒼白になりました。結局、たった1日でクレームが出て「明日はもう来なくていい」と言われてしまったんです。

工藤:後にも先にも、松林さんにクレームが出たのはその時だけです。でも私は「次の現場があるから大丈夫」とすぐ別の案件を依頼しましたよね。

松林:その言葉にどれだけ救われたか。大学卒業後は一度一般企業に就職しましたが、あの時の通訳の楽しさが忘れられず、独立された工藤さんの元へ相談に伺いました。「何ができるか分からないけど、うちでコーディネーターの仕事を手伝いませんか?」と誘っていただき、通訳の仕事が見つかるまでアルバイトもさせていただきました。

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出産10日前まで勤務、入院中も翻訳。驚異の「やり抜く力」

工藤:松林さんは本当にお子様が生まれてからもパワフルでした。産休や育休もほとんど取られていないですよね?

松林:出産の10日前までオフィス勤務をしていましたし、実は入院中のベッドの上でも翻訳をしていたんです(笑)。保育園に預けるためには稼働実績が必要だったので、御社に「仕事をください」とお願いしました。

工藤:産後すぐに依頼してしまってすみません!でも、それだけ松林さんは頼みやすい存在なんです。育児との両立はどう工夫されましたか?

松林:仕事はお金を頂いている以上、妥協はできません。だからこそ「手を抜けるのは家事」と割り切りました。離乳食は市販品を活用し、大変な時期は外部の委託サービスを積極的に使って乗り切りました。勉強時間は、3時間ごとの授乳の合間などを効率よく使って確保していましたね。

「雑用」も厭わないプロの姿勢

工藤:リモート会議が増えた今、通訳として意識していることはありますか?

松林:声だけで判断されるので、滑舌やマイク位置には特に配慮しています。経済紙のような硬い言葉ではなく、耳で聞いてすぐ理解できるテンポの良い訳出を心がけ、今誰が話しているか分かるように発言者の名前を最初に入れるなどの工夫をしています。

工藤:松林さんは現場での人間関係の築き方も素晴らしいですよね。

松林:「仕事の線引き」はしないようにしています。会議のレイアウトが未完成なら一緒にテーブルを運びますし、お茶がなくなっていたら事務局にそっと伝えます。「そんな雑用をすると他の通訳者に迷惑だ」と抗議されたこともありますが、私は自分のスタイルを変えませんでした。現場が円滑に回ることが、会議を成功に導くために必要だと知っているからです。

12年のインハウスを経てフリーランスへ。支えになった「鈍感力」

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工藤:製薬会社でのインハウス通訳は12年にもなりましたね。ついにフリーランスになる決心をされた理由は?

松林:実力が通用するか不安でしたが、インハウス時代の仲間や工藤さんから「早くフリーになったらいい」と背中を押していただきました。フリーになってまだ数週間ですが、毎日お声がけをいただき、新しい現場では心臓が出るほど緊張しながらも充実感を感じています。

工藤:コーディネーターとしても、松林さんのようなフィードバックを大事にし、柔軟に対応してくれる方は非常にアサインしやすいです。

松林:ネガティブなフィードバックも、レベルアップのチャンスだと思って大切にしています。最後に通訳を目指す方へ伝えたいのは、めげない心、ある意味での「鈍感力」の重要性です。自分が「今だ」と思ったタイミングで、ぜひ挑戦してほしいと思います。

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